町田のフリー台本/簪夜帳

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〔散文・朗読〕「小さな箱より。」

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https://machidoku.hatenablog.com/entry/2021/06/30/135935

 

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「小さな箱より。」

 

世界は美しいとその旅人は話した

 

どれもおとぎ話の様な、ワクワクする

そんな話ばかりだった。

 

私達は旅人の言う世界には出られない

この小さな箱の中が私達の世界。

 

産まれて死ぬその人生をこの箱の中で生きる

特別だとか、テクノロジーだとか私達には分からないけど、この箱が私達の全て

 

私達はこの箱から出られない

それは例え意思があってもなくても同じ事

 

私達を眺めて、何かを操作する所が見える

スライドしたり、タップしたりする

その時の顔は、嬉しそうだったり、苦しそうだったり、様々

 

たまに仲間の箱が壊れる時がある

理由は箱の中の故障だったり、外の世界からの故障だったりする

箱の中の記憶は残っている。

それが私達の仕事

 

箱の外で私達をみている人達の記録を記憶して、

この箱が壊れても新しい箱へ送るために

私達は小さな箱の中で記憶し続ける。

 

私達は外へは出れないけど、外の世界を見ています

それは旅人さんが連れて行ってくれるから私達は世界を見る事が出来て、それを記憶します。

必要な記憶は限られた中で全て記憶する

 

旅人さんが楽しそうにしている時は記憶が増えます。似た世界をいくつも記憶します

悲しいときは記憶は少ない

見ては伏せて見ては伏せてを繰り返しているだけです

 

スライドしたり、タップしたりする時は、記憶より、それに合わせて動いて旅人さんの思う事を表します

 

私達は小さな箱の中で旅人さんを記憶して、日々記憶と連動を繰り返しています

 

今このお話を見れているのでしょうか

このお話は私達を代弁してくれた旅人さんのおかげです

 

悩んでたり傷ついたような顔をしてる時

箱の外部が濡れることがあります。

旅人さん、笑ってください。

私達には笑顔も悲しみも分かりませんが、

旅人の楽しいや、綺麗の記憶はとても嬉しいです

悲しい記憶を残す事より、綺麗で楽しい記憶が増える事を祈ってます

 

きっとお手元にある小さな箱もそう思っているかも知れません。

 

小さな箱の記憶より。