町田のフリー台本/簪夜帳

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生きる世界と死ぬ世界(声劇)2人

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声劇台本です。

男女のお話です。

配役(2人)/15分~

主人公→ミズキ(女、ボクっ子)

              ミカゲ(男、クール系)

 

セリフ→「」

ナレーション→〔〕ここは心情的な感じです

表記↓

(配役名)「セリフ」

(配役名)〔ナレーション〕

 

短い台本なので、何度も演じてみてください!

 

 

 

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(ミズキ)「ぼく達の世界はとても小さい。

人間が生きる為に種族は星に成る。」

 

(ミカゲ)「月の信者によって、世界は生きる者と、星に成る者で分かれた。

月に選ばれた者は主(しゅ)と呼ばれ、生きる者。

星に成る者は糧(かて)と呼ばれる。

……あの丘に見える塔は、星の塔と言う。

糧が星に成る場所。」

(ミズキ)「ミーカーゲっ!また勉強?ほんとに好きだねぇ。なになに?えーっと?

主と糧の成り立ち。ってまた難しいの読んでる!ミカゲは主に成れるって!ね!!」

(ミカゲ)「ミズキ、お前はノーテンキ過ぎなんだよ。来月なんだぞ?もう三日で主か糧か、振り分けられる。

もしも糧に成ったら…怖くないのか?」

(ミズキ)「そりゃ、怖いよ。でもさ、主でも糧でもそんなに早く死んだりしないんでしょ?

まぁ、糧は早く死んじゃうんだろうけどさ。」

(ミカゲ)「そうだな……。ここ数年、星に成った人は1人も居ない、なのに今さら星を選ぶって、おかしくないか?」

(ミズキ)「今までは年に一度星を選んでたけど、そう言えばここ数年は居なかったよね。

あれじゃないの?月の信者様のお告げじゃない?」

(ミカゲ)「信者様のお告げ…か……。」

(ミカゲ)〔信者様のお告げを聞いてこの世界の人間は生きている。

この世界はおかしい。〕

(ミズキ)〔ミカゲはこの世界はおかしいと言う。それはぼくも同じ考えだ。

でも、信者様の大きさや、この世界の月への信仰心はとてつもない。

簡単には覆せないだろう。〕

(ミカゲ)「なぁ。ミズキ。お前変な事考えてないだろうな。

糧に成るとか、許さないからな。」

(ミズキ)「怖い顔すんなよーそんな事考えてるように見えるかー?」

(ミカゲ)「見える。ミズキは昔っからそうだ。厄介事を引き受けすぎだ。」

(ミズキ)「厄介事ばかりじゃないしー。楽だってするよ?」

(ミズキ)〔ミカゲとは小さい頃からの仲だ、

ぼくには親がいない。ミカゲの家にお世話になっている。

母は主、父は糧だった。星になる父の後を母は追っていった。母は最後に少しの友達と仲良く、楽しく生きなさいと言っていた。

人が人を愛する事はお告げを超えると知っている。〕

(ミカゲ)〔ミズキとは親を亡くしてからずっと一緒だ、家族で、友達。

ずっと隣りにいて、何をするにも一緒だった。

嫌な予感はずっとしていた。〕

 

(ミズキ)「ミカゲどっちだった?主?」

(ミカゲ)「あぁ、主だ。」

(ミズキ)「良かったぁ!ミカゲ!ほんとに、今までありがとう!」

(ミカゲ)「なんだよ、急に。どうしたんだよ」

(ミズキ)「ぼくは糧なんだ。だから、ミカゲが生きてくれるなら嬉しいなって!」

(ミカゲ)「え…嘘だろ?糧って。そんな冗談よせって。」

(ミズキ)「本当だよ…。ごめん。ミカゲ。ぼくだって、ミカゲといたいよ。出来るならずっとね。」

(ミカゲ)「糧になるのは男の定めだろ!なんでお前が…どうして糧にならないといけないんだ!」

(ミズキ)「そうだね。でも、気づいたんだ。女が糧になれば、きっともう糧は必要無くなるんじゃないかって。」

(ミカゲ)「だからって、なんでミズキなんだ!」

(ミズキ)「ぼくは女で、産まれてからずっと糧だったからだよ。」

 

(ミカゲ)〔ミズキの言葉がどんな本よりも難しく感じた。

ミズキが居なくなる。この世界から消える。

でも、その事を知る人は誰もいない。

知らないうちに消えていく、誰の記憶にも残らないまま。〕

(ミズキ)〔ぼくは消える。産まれた理由を何度も考えた。答えは簡単だった。

ミカゲを守るため。

ずっと女の振る舞いをやめていた、でも、ミカゲは気づいていたみたいだけど。

私の命でこれから先の星を生まない。

最後にする。〕

 

(ミズキ)〔世界を変えるの。もう星を生まない為に。

この世界は糧がなくたって生きていけるもの。〕

(ミカゲ)〔世界は簡単には変わらないと言う。だが、この世界は変わった。

それも案外あっさりと。深く根付いた信仰ですら、消え去って行った。〕

 

(ミカゲ)「…星の丘。ここから星を生んでた、ただの生贄って事だったな。

気づいたら長い時間が流れた、もうとっくに大人になってさ。ここからミズキが落ちていった事今でも覚えてる。」

(ミズキ)「……そうね。懐かしいね。

私も覚えてる。ミカゲが飛び込んで来た事も、湖の中で唇が触れた事もね!」

(ミカゲ)「あぁ、そんな事も、あったかな。」

(ミズキ)「もう!、忘れないでよ?私達の思い出。記憶なんだからね!」

(ミカゲ)「忘れないさ。お前のお母さんがお父さんの後を追って行った気持ちがわかる気がする。」

(ミズキ)「どうしたの、改まっちゃって。」

(ミカゲ)「自分よりも大事だと思えるのって、好きってやつなんだろうか。」

(ミズキ)「そうなんじゃない?愛って事なんじゃないの?って、とっくに知ってるでしょ?ね?ミカゲ。」

(ミカゲ)「あぁ。そうだな。知っているとも。なぁ、ミズキ…。」

 

(ミカゲ)〔星の丘の教会。塔の鐘が鳴る。〕

(ミズキ)〔着慣れない純白の服を着て。〕