町田のフリー台本/簪夜帳

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髪を切る(朗読セリフ込)

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夏が来る。

梅雨が明けて、じめったい日々から

太陽がジリジリ照らす日々へと、移り変わる

 

「夏は嫌いだ」

夏が近くなる度君は言っていた

 

「髪が体に張り付くの」

君の長い黒髪は夏の光を浴びて輝く

首に張り付く髪に魅惑を感じていた。

 

「僕は好きだよ……。いや、好きだった」

むせるような熱い風も、鬱陶しく垂れる汗も、

ジリジリ照り付ける太陽も、高く広い空も。

 

君が好きだったと言えば良かったと思う

だけど、言えなかった。言えるはずない。

 

八月。

少し涙ぐむ君は髪を切る。

そしてもう二度と伸ばすことは出来なくなった

窓辺に立つ君の背中にはあの黒髪はもう無い。

髪をなびかせる仕草も見る事は無かった。

 

七月。(なながつ)

もう夏だ。

僕は髪を切る。

あの日までの君と同じぐらいまで伸ばし続けた

長い黒髪を。

「君が見たらなんでゆうのかな…。きっと夏は嫌いって言うのかな……。」

 

君が好きだった花を飾って、

君のいない1日を歩き出す。