町田のフリー台本/簪夜帳

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Kaede-カエデ-«詩»

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甘い薫りがした。

あの時と同じ香り。

 

琥珀色の髪がサラサラ流れて僕の掌に纒(マト)わり付く

蜜のように甘く、水の様に零れ落ちて行く

君の泪が美しかった。命の色だった。

息を呑み込んでも噛み砕いても

僕はどうしても君にはなれなかった

風が流れた楓が嗤う

どう足掻いたって追いつけない、そんな努力なんて無駄だって、

きっと君も嗤うんだろう。

蛋白(タンパク)な無味と冷えた声だ

僕はどうしても笑えない。

 

甘い舌(コトバ)を絡める

あの日が最後のハズだった

 

琥珀色の髪に腕を通した絡み付く愛と縛り付ける快(ココロ)

溢れて伝う蜜に口を附(ツ)けた。

また僕は逃れられない

命の色に魅せられてしまったから

息を穿(ハ)いた声が鳴いた

絡み合うそれは時が過ぎても尚

空気に溶けた僕等は堕ちて行く

 

楓の声が止んだ事にも気づかない

眼を閉じれば充たされる欲(アイ)

傷付け合って慰め合った僕等は不透明だった

髪に濁った白が絡まって無味を含んで

冷たい声で頬に触れた君は嗤った

 

君に魅せられた楓色の宝石